実務ガイド

インボイスと電子帳簿保存法。
請求書まわりで、いま何が義務なのか

2026年9月1日 | ナカツギ運営事務局

「請求書の電子化が義務になった」という言い方を目にすることがあります。しかし、これは正確ではありません。インボイス制度と電子帳簿保存法は別の制度で、義務の内容も異なります。混同したまま対応すると、必要のない作業に時間を使ったり、逆に本当に必要な対応を見落としたりします。この記事では、2つの制度を切り分けたうえで、事業者が実際にやるべきことだけを整理します。

まず、2つの制度を切り分ける

混乱のもとは、どちらも請求書に関係する制度でありながら、目的がまったく違うことにあります。

  インボイス制度 電子帳簿保存法
関係する税 消費税 法人税・所得税など
何を求めているか 請求書に何を書くか 書類をどう保存するか
登録は必要か 必要(任意) 不要

つまりインボイスは「書き方」、電子帳簿保存法は「しまい方」の話です。この区別さえつけば、あとは整理できます。

インボイス制度:請求書に何を書くか

取引先が課税事業者の場合、適格請求書がなければ仕入税額控除ができません。相手の税負担が増えるため、登録の有無が取引の判断に影響します。

適格請求書の記載事項

6つの必須項目

  • 発行事業者の氏名または名称、および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象ならその旨)
  • 税率ごとに区分した対価の額(税抜または税込)と、適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額
  • 交付を受ける事業者の氏名または名称

従来の請求書との違いは、登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額の3点です。既存のフォーマットにこの3つを足せば、要件は満たせます。

登録するかどうかの判断

登録すると免税事業者ではなくなり、消費税の納税義務が生じます。判断の分かれ目は、取引先が誰かです。

  • 取引先が事業者中心 → 登録しないと、相手の負担が増え、取引で不利になりやすい
  • 取引先が一般消費者中心 → 相手は仕入税額控除をしないため、登録の必要性は低い

売上規模だけで決められる話ではありません。誰に売っているかで決まります。

免税事業者からの仕入れには経過措置がある

登録していない事業者からの仕入れであっても、経過措置により一定割合の控除が認められています。制度開始から段階的に縮小される仕組みで、期間の区切りごとに控除できる割合が下がっていきます。

発注する側にとっては、免税事業者との取引コストが時間とともに上がっていくということです。受注する側から見れば、登録の有無が取引の可否に影響する場面が増えていきます。

確認してください 経過措置の割合と期間は、税制改正で変更される可能性があります。実際の取引判断にあたっては、国税庁の最新の資料または顧問税理士にご確認ください。

電子帳簿保存法:書類をどう保存するか

ここが最も誤解されている部分です。

よくある誤解 「請求書を電子で発行しなければならない」という義務はありません。発行は紙でも電子でも自由です。義務なのは、電子で受け取ったものを電子のまま保存することです。

2022年1月施行の改正電子帳簿保存法により、電子的にやりとりした取引関係書類は電子データのまま保存することが義務づけられました。2023年12月31日までの宥恕期間を経て、2024年1月1日以降は完全義務化されています。法人・個人事業主を問わず、すべての事業者が対象です。

対象になるもの

電子的にやりとりした、請求書・領収書・注文書・見積書・契約書などです。具体的には次のようなケースが該当します。

  • メールに添付されたPDFの請求書を受け取った
  • 取引先のサイトから請求書をダウンロードした
  • クラウドサービス上で発行された領収書を取得した
  • チャットツールで見積書のデータを受け取った

これらを印刷して紙のファイルに綴じる運用は、認められません。電子データのまま保存する必要があります。

保存の要件

単にファイルを置いておけばよいわけではなく、2つの要件があります。

電子取引データの保存要件

  • 真実性の確保:改ざんを防ぐ措置。タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が残るシステムの利用、または事務処理規程の整備と運用
  • 可視性の確保:ディスプレイと書面で速やかに出力できること。取引年月日・取引金額・取引先で検索できること

検索要件は、専用システムがなくても満たせます。ファイル名に「日付_金額_取引先」を入れてフォルダに保存する方法も認められています。ただし件数が増えると、命名規則の維持が難しくなり、運用が破綻しがちです。

紙の書類は、これまで通り

紙で受け取った請求書を紙のまま保存することは、従来どおり認められています。完全義務化されたのは電子取引データの保存だけで、紙をスキャンして保存する「スキャナ保存」や、帳簿の電子保存は任意のままです。

また、電子化対応が困難な事業者に対しては猶予措置が設けられており、一定の要件を満たす場合には書面での保存も認められています。

結局、何をすればいいのか

制度の説明は長くなりましたが、実務でやることは多くありません。

今日から着手できること

  • 請求書のテンプレートを見直す:登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額が入っているか
  • 電子で受け取った書類の置き場所を決める:メール添付のPDFを、印刷せずに保存する場所
  • ファイル名の規則を決める:「20260401_55000_株式会社◯◯」のような形式に統一する
  • 事務処理規程を用意する:国税庁がサンプルを公開しています。真実性の確保は、この方法が最も手軽です

4つとも、一度整えれば以降は運用するだけです。制度への対応は、最初の設計でほぼ決まります。

出典:国税庁「インボイス制度に関する各種資料」「電子帳簿保存法関係」。制度の詳細および最新の取扱いは、国税庁の公表資料をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。

書類の発行と保存を、取引の流れに組み込む

ナカツギは、見積書・請書・適格請求書・精算書の発行を取引の流れの中で行うB2B取引プラットフォームです。発行した書類は取引ごとに記録として残ります。媒介者交付特例に基づき、運営会社の名義・登録番号で適格請求書を発行するため、出品者は自身の登録番号を相手に開示せずに、相手の仕入税額控除に対応できます。

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